研修のリモート化の是非について 2020年6月22日 投稿情報

集合型研修とリモート形式研修の考察

2020年発生のコロナ禍において、研修・教育関連事業を主としている事業者の殆どは、他の業種と同様に事業実施方法について苦慮しています。
研修体系・制度における人材育成には、OJT等の実務指導型を除くと一般的に集合型の研修形式とEラーニングなどの自己啓発型に大別されます。
コロナ禍ではいわゆる3密の回避が絶対的に望まれるわけですが、集合型研修は典型的な3密の条件が揃った実施形態の為、他の殆どのサービス業と共に研修計画そのものが、中止か延期、もしくは再考となりました。

弊社のクライアントでも第2四半期から従来型の研修の再開も予定されていますが、冬期にコロナの第2波発生も十分考えられる事から、3密を避ける研修形態の相談も増え始めています。
リモート形式における研修の実施について、その仕様や研修効果、実施体制など様々な角度から検証や研究を始めつつありますが、実際のところ現在の状況下では、まだまだ難しいものがあります。

そもそも各社の教育制度における研修項目は、組織内での職務や職掌、職責に応じる、もしくは役に立つ様々なスキルの習得や付与が目的の場合がほとんどです。
受講対象者もどちらかというと、個人のキャリアアップよりは研修受講そのものが職務の範疇としてとらえている場合が多く、極論ではありますが仕事の一部となっているととらえていると考えます。

その為、研修に参加する事自体が制度上の行事化しており、積極的に研修に参加する意識は極めて低く、研修や教育機会を楽しみにしている社員はほぼ皆無だと思われます。
むしろ、通常業務の妨げくらいに思っている受講者も決して少なくありません。
私自身も受講者とくに職位の上級の社員から、目の前の取引先とのやり取りが山積しているのになぜ1日中研修を受けなければならないのか?と冗談交じりに言われた事もあります。

研修目的や自社の人材育成について、少なくても建前論でも理解していないと、研修自体のモチベーションはなかなか向上しないのは事実です。
しかしながら、講師の進め方や研修プログラムの内容にもよりますが、そんな受講者でも研修の後半には前のめりになって研修カリキュラムを消化していき自己成長の糧となる情報や知識が知らず知らずのうちに蓄積されていきます。

そして、時には研修受講期間中にその蓄積された知識を、実際の業務や自己成長に活かす知恵に昇華させる社員も決して少なくありません。
その研修効果の大きな要因は、講義する側と受講する側のコミュニケーションやカリキュラムにもよりますが、例えばグループワーク等による受講者同士の意見交換やコミュニケーションが、行事化された研修計画が実利のあるものになっていくのです。

そのコミュニケーションの場がいわゆる3密であるわけですから、なかなか難しい状況なのです。
従来型研修の実施時期の見直しを図るクライアントは、組織内コミュニケーションの重要性を理解している場合が殆どです。
実施時期を大きく見直さずに、リモート形式など実施方法の見直しを図るクライアントが、いずれ研修の費用対効果で悩むのではないかと考えます。

つまり、予備校や資格スクールのようにビデオ学習やEラーニングの場合は、もともと受講目的が個人個人明確で、どちらかというと学習意欲の高い、意識の高い人でないと、決して目的にかなった結果は期待できないのです。
ところが、現在研修実施体系で考えられるているリモート形式やEラーニングは、先述したようにもともと受講意識がそれほど高くなく、カリキュラム内での講師や受講者同士のコミュニケーション(うわべだけでなく、うまく言えませんが五感的な対応)の設定が難しく、しり上がりのモチベーションアップが望めないのです。

ですので結論からすると、人材育成体系の基本となる各種研修については従来型の実施スタイルがベターではなくベストだと考えております。
但し、今のデジタル世代が中心となってくると、むしろリモート形式やEラーニングの研修スタイルの方がウケが良くなってくるかもしれません。
世代的には外線電話を取る事が出来ない社員や携帯電話でも登録表示された相手しか電話しなかったり、例え登録していてもメールやLineなどSNS系の方法でしかやり取りができない社員が増えてきていますので、これから先は研修方法も工夫が必要な時代が来ていると言えます。

但し、人間がいる限り、人が働く組織である限り、対面の実際のコミュニケーションは不可欠だと考えます。
それは「人間関係の基本はコミュニケーションである」と言う真実があるからです。
ただ、今回の仕事の仕方の変化は、コロナ禍における極めて外的要因が強いので、各社とも検討に挙げていますがひょっとしたら政府主導の働き方改革が別の意味で実現されるかもしれません。

就業や労働価値観の違う世代が交代し(今は混在)、働き方改革が進み、コロナ禍の様な外的要因による強制的な環境変化が進むと、そのうち組織文化や組織風土人事組織論など過去の常識となり、会社というプラットフォーム自体がなくなってくる時代がくるのかもしれません。
今まさにパラダイムシフトのただ中なのかもしれません

2020/06/22
執筆署名:佐藤康弘