業務フローや仕組みの見直し 2020年8月17日 投稿情報

医療機関等の縦と横の流れについて

 コロナ禍の中、業種業界を問わず(一部利益をだしている企業もあります)多くの企業が厳しい
経営環境下に置かれています。
その中でもひと際、国民にとってなくてはならない医療機関の経営が厳しい状況と言われています。

 医病院の大小を問わず、国民の多くが思っている事は、「病院に行くと、待っている間に感染するのではないか」という心配です。
医療機関は昔から待合時間が長くて、診察時間が短いというイメージが強くあります。
 これは医療機関の業務フローや組織や仕組みの根本的な問題です。
ですので「待ち時間の短縮」は医療機関において、当然コロナ前から重要な改善項目として常に意識されてきました。
(※意識はしていても改善に着手している所は決して多くはありません)

 経営の目線で捉えると患者は収益の大きな源泉であり、当然患者や利用者を増やす必要が
あります。
また病床の回転率の向上もそのまま経営の成果として直結します。
 経営戦略上の話は端折りますが、利益の源泉となる病院利用者を増やす事は重要であり、そのためには利用者や患者の心配を少しでも無くすための努力は必要不可欠であることは言うまでも
ありません。


 つまり患者満足度と従業員満足度の両面が他の業種以上に非常に重要なファクターなのです。
しかし、医療機関は専門職の集合体ですので、得てして横の流れや連携より、縦の流れの効率化を優先しがちです。
一般的に言われる組織や部門間の壁です。

横の流れはまさに患者自身の受診から健康状態の回復への同線であり、縦の流れは医療従事者や部門による医療サービスの提供です。
この縦の流れによる障壁が患者の不安感を増大させる事に大きな影響を及ぼしているわけです。
 患者の不安感を減少させるには当然医療機関等で働くスタッフ全てが意識している寄り添う気持ちなどは、医療従事者なら誰でも当たり前の様に実践されていますが、実は業務フローや仕組みの改善で患者の不安感はかなり減少出来る事に意外と関心を持たれていない気がします。

 業務フローや仕組みや組織の改革・改善はどちらかというとテクニカルな取組で、ご存じの通り面倒な要素が多いものです。
ですので、どうしてもヒューマンファクター(コミュニケーションスキルの向上等)ヒューマンパワーで乗り切ろうとしてしまいます。
 いわゆる働く医療従事者個々の頑張りや人間性に依存する訳です。
もともと医療従事者の方々は利他的で、奉仕や貢献意識が高く、ともすれば自己犠牲を厭わずヒューマンファクター全開で取り組まれます。
 その結果、人材のすり潰しが発生してしまい、最悪の場合は仕事がし難い、ヒューマンエラーが起きやすい組織に陥ってしまう可能性が非常に高いと考えます。


 患者満足度を本気で分析すると、意外と組織や部門の壁等、縦の流れの問題が見えてくる場合が決してすくなくありません。
コロナ禍の大きな外的要因による変化の中で、今までと同じ組織体や仕組みでコロナ前と同じ成果や運用が期待できるわけはありません。
 今こそ、本当の意味で医療従事者の縦の流れと患者や利用者の横の流れの融合を見つめ直す、いい機会なのかしれません。
「あの病院に行って診てもらうと安心する」と言われるためには、医療関係者のヒューマンファクターや医療の質の高さと共に仕組みの高さも同時並行的に上げていく必要があるのではないかと考えます。
 これは医療機関だけでなく、介護や福祉業界などもほぼ同じで、もちろん他の業界でも縦横の流れの課題は常に発生する問題であると言えます。

2020/08/17
執筆署名:佐藤康弘