福祉:資料提供「特別支援学校進路指導における戦略校の現状(福岡市)」 2020年11月02日  

特別支援学校(知的しょう害)でのキャリア教育考(福岡市ケース) 

 弊社が担当させていただいている軽度の知的しょう害を持った高校生達が通う福岡市立特別支援学校「博多高等学園」における習得別クラスの再編成しての授業形態はここ数年で始めました。(ブログ追記) 

 当該校は開校当初から最近まではどのクラス、どの生徒も職業教育の上級レベルから初級のキャリア教育まで、同じような理解度と習得度(成果の発揮)の成果をあげ、時には就職を目指す健常者の高校生より高い結果を出せていました。もちろん入試の段階でしょう害レベルを推し量り、目指している一般就労が可能(軽度の知的障がい者)な生徒達を入学させてきたのは言うまでもありません。 
 これが博多高等学園だけでなく他の大規模自治体が設置している戦略性(就労率の向上を目的)のある位置づけであり、軽度から重度までの生徒達が通う従来型の特別支援学校とは大きな違いであり、特徴でもあります。 

 博多高等学園はハード設備から授業カリキュラム、配置の教員に至るまで、他の既存の特別支援学校とはその存在意義と機能は大きな違いがあります。ところがここ数年、人口が増え続ける福岡市では、人口増に比例してしょう害者の生徒達も増加しており、結果、博多高等学園でもしょう害レベルを広げて受け入れる事になり、戦略校としての均一的な高い授業成果が望めなくなってきました。


 現在までの就労率の高さは今に至るまでの教員たちの専門的な取り組みと卒業生達の企業での活躍度や優秀な評価、更には採用に理解のある企業のおかげと考えております。 それが将来に向けてリスクヘッジ的な(もちろんコロナ禍等の外部要因もありますが就労可能レベルの低下が懸念)意味合いでの習得別再編成措置なのです。 

 実際のところ知的しょう害レベルが拡大することで授業の通常運営(弊社が実施する授業計画)が難しい事態がしばしば発生しました。
そのため習得度の高い生徒達が、まだまだ基礎的授業が必要な生徒に引っ張られるという健常者の学校にもよく見られる負のパターンに陥ったのです。


  健常者の場合は教員による集中的な教育的指導など授業運営を健全な形に軌道修正することも可能ではありますが、しょう害者の場合は生徒による意図的な授業妨害ではなく、しょう害によるコミュニケーション上の問題であり、生徒原因として片付ける事ができないのです。 

 更に我々外部の専門職能によるキャリア教育の実践は元々健常者を対象としており、しょう害者教育の専門的な知見と教育をうけていない専門プロ講師にもその対応に戸惑う事も少なくありませんでした。(しょう害者対応だけでなく人権等様々な問題も含む)
 我々外部の専門職能の活用意義は就労率をあげるという成果を出すことにあり、また教員のように教育者でもありませんので、能力の高い生徒は更に向上させ、まだ基礎的な理解を深めなければならない生徒には底上げ機会を増やすための措置をとらさせていただけるよう学校側へ提案させていただく事になり、現在に至っています。 

 もちろん私自身が教育委員会の専門委員を務めており、それなりの根回しが功を奏する事になったのは事実です。
それを考えると他の地域で同じ役割を担っている専門職能の方々の苦労が伺えます。
  また、学校側としょう害者教育の教育者としての教員たちの理解が大きな支援になった事は間違いありません。
 福岡市(博多高等学園等戦略校)においては、現在の生徒達と行政側の状況が変わり、今までの指導ノウハウで今までと同じ成果が期待できなくなってきた事は事実です。 

難しい課題を抱えている実態があるのです。 

2020/11/02
執筆署名:佐藤康弘