研修のリモート形式の実施について 2020年12月06日 投稿情報

リモート型研修の考察

 コロナ禍に対応した研修スタイルとして、リモート形式の研修スタイルの是非と人財育成メソッドや研修効果の関連について本HP記事(2020/06/22
にて所感を掲載させて頂きました。今回は実際リモート形式研修を実施した結果からの考察を記事に致します。

 研修の受講対象者は、技術系(システム開発から製造等々)の企業に所属する入社1年から数年程度の若手社員で担当する職種は様々(営業や事務系も含む)です。主催は大手電機メーカーで、研修参加企業はメーカーのグループや協力企業等系列会社で企業規模も様々です。

 研修カリキュラムは、従来の集合型研修で実施していた内容を圧縮して1日研修を半日研修としました。
また、事前に課題を与えており、本来は講義で初めて理解するところを事前に考えてもらうようにしました。
もちろん課題の内容は先輩や上司に聞くなど、調べることである程度は共有できる、または回答が得られるレベルの課題です。
リモートのシステムは定番の「ズーム」を使用しました。

 研修項目自体がヒューマンスキル系のため、講義・講話のみで理解をすすめるのは難しく、研修効果を上げるためにはグループワークやペアワークなどのセッションが必須です。
このワークセッションの実施がリモート形式の研修においていくつかある課題のうち大きな壁となります。
今回は受講者を4名1グループで設定し、グループワーク中は講師がグループ毎に定期的に入室します。
講師がAグループに入っている時は、他のグループの状況は当然ウォッチできない状況です。
ただし、全体の討議音声はチェックできるので、他のファシリテーターが討議状況を拾い全体の進行上の把握をしながら、メイン講師のアシストを行いました。

 従来の集合型の場合は、講師が同じ会場で全体を把握することが容易ですが、リモートの場合はシステム上入退出のひと手間があり、時間コントロールが難しい側面があります。
また、物理的にファシリテーターを配置できないため、グループワークの成否は司会進行等を担うリーダーシップの強い受講者を予め選出しておくことが肝要です。
集合型の場合、通常はその場で講師側が人物を見極めながらリーダーを決めたりしますが、大きく外れることはないとは思います。しかしリモートの場合、受講者のモチベーションや性格・個人適性等から極端に発言が少なかったり、他の受講者の発言の聞き役に徹するなどグループワークの進行に不安(問題)があることも想定されます。

 次の課題が、受講者のモチベーションアップをいかに維持向上させるかがあります。
その中で、受講側の環境の課題点です。研修受講の環境には、受講場所とネットワークシステムと上司や所属会社の理解等があります。
受講場所は、研修に集中できるという観点から会議室や応接室などクローズされた場所が望ましいです。会議スペースがオープンであれば受講者の集中力と持続性が低下してしまう可能性が高いです。

 実際の事例として、活発な討議中に受講者の後ろに上司らしき社員が立ち、その瞬間受講者の声のトーンと発言内容が落ちる場面がありました。
組織力強化の大きな要素であるヒューマンスキルの学びに、自分の意見や考えに対して、遠慮が必要なシーンは可能な限り避けるべきであります。
もちろん所属会社の環境整備は物理的に困難な場合もあるかもしれませんが、留意すべき点です。
例えオープンスペースであっても受講環境は意識的に作る事または配慮することは十分可能です。

 次はシステム上の問題です。ネットワークに関しては、発信側・受信側でそれぞれ環境が違うので難しい点ではありますが、ネットワークの接続は可能であればWi-Fiから有線に切り替えるなどが考えられます。
事例として受講者全員の顔がみえるようにする(ギャラリービュー)と一部環境ではネットワークダウンする場合もあります。
また、グループワークでは「ブレイクアウトルーム(ズームの討議システム)」を使いますが、音声チャットやシステム上、入退室等のマニュアル整備が必要です。(ワークを終了してブレイクアウトルームを退出してしまうと参加メンバーから消えてしまう事もあります。)
上記以外に、パソコンは一人一台が必須条件です。同じ所属会社で複数名参加する場合で、テレビ会議システムなど一台でマイク・スピーカー・モニターを複数受講者が共有するのは研修スタイルとしては不可です。(グループワークの設定ができないなど進行上の不具合が多発します)

 その他、リモート形式の研修の場合、当然若い世代の方が問題なくシステムを受け入れ活用できるようです。
但し、ヒューマンスキルの理解・習得の観点からの課題として、リモート上のやり取りがコミュニケーションスキルであると勘違いさせない事です。
リモートでも音声も表情も拾うことができますが、本質的には自己中心の一方通行の面が強いように感じます。
また、リモート形式の研修を実施しながら、気づいた点としては、集合型研修時以上に理解度の確認作業の頻度をあげるのが効果的です。
講師の講義を聞いて、感想は?感じたことは?的な講師からの質問を定期的に与える事で、一方通行なコミュニケーションを回避できる可能性が高いように思えます。本来は通信制大学のカリキュラムと同じで、スクーリング的な集合型の機会をフォローアップ時期に設置することが研修効果を高める仕組みであると言えます。
(本来的には集まらない為のリモート形式研修の意義とは逆になりますが)

2020/06/22
執筆署名:佐藤康弘

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