福祉:特集記事その④ 特別支援学校におけるキャリア教育 2020年7月17日 投稿情報「試行錯誤時期のカリキュラムベースの確立」
試行錯誤時期のカリキュラムベースの確立
その③でも記したように、弊社が担当する博多高等学園では、特別支援学校で単に外部専門職能を活用した就労支援授業の実施ではなく、戦略性の高い博多高等学園では様々な問題の起因となる外部要因や環境の解決も同時に取り組む必要がありました。
前述したように当時の教員達は、当然以前からその③で記した①~⑩(実際は細かい点まで含めると20近くありました。)の様々な課題点は把握していたのですが、改めて外部から指摘されることにより、自分達の問題意識と要因や外部・内部環境分析の正しさに自信を持たれたようでした。(コンサルティングの活用で最も多い客観的指摘と判断の効果)
しかしながら、その多くの問題を乗り越えるにはかなり難しいものもあります。
それは我々が関与できない要因で、教育者や学校教育の価値観や前例踏襲的な方策、敢えて誤解を恐れずに記すと、何よりも障がい者を取り巻く福祉という硬直した固定観念のようなものです。
また、他の一部自治体の先進的な取り組みや一般の企業や採用市場の常識が、なかなか理解していただけない公的(公立)な教育界や保護者、行政機関等の常識が目の前の大きな壁としてたちはだかっていました。
これらの問題にこだわる事は、コンサルタントとしての立場(常識)としては、本来の授業計画を前に進める事が極めて困難に陥る可能性が高く、リスクヘッジとして回避しなければならず、優先順位を下げました。
コンサルタントとしての立場(常識)とは、問題には解決できる問題と解決できない問題があり、また、問題にはどうでもいい問題と重要な問題があります。常に目的と目標を取り違えずにプライオリティパスを確認しつづけるというものです。
つまり①~⑩の内いくつかは解決できない問題であり、その問題にいつまでもあたっていても時間の浪費にしかならないという判断です。(取り組む事が決して無駄なことではありません)
ただ、その後、福岡市教育委員会が教育委員会主催の障がい者(新卒)の一般就労を実現するための「夢ふくおかネットワーク」を立上げました。
この組織が前述した解決できない問題の取り組みにあたる事ができ、この組織に難しく、かつ時間がかかる大きな問題を投げることができたのです。
話を戻します。
軽度の知的障がい者を持った高校生達に国が進めるキャリア教育の実践が困難な事がわかったわけですが、もう一つの教育である職業教育に関しては、部分的には健常者より高度なノウハウの習得が可能である事が判明しました。それは、一般的に日本の就職活動において、当面の「目標」は就職試験を突破し、採用を勝ち取ることであり。「目的」は就職主体者の一生(人生)における長い職業人生の意義をどう理解し実現するかということです。キャリア指導の本道から外れますが、目的より目標の達成に施策の中心の切り替えを決断しました。
つまり、どんな組織であろうと採用場面でかならず実施する面接について、本質的なキャリア観醸成からは外れますが、まず乗り切るためのノウハウを習得させるというものです。これはリクルーティングを商売にしている企業などが実施する就労支援の表面的なテクニックになります。
教育やリクルーティングを商売にしている企業とは違い、公立の学校が施す教育ですので、多少に違和感はありましたが、当面の目標はクリアできる自信がありましたので、カリキュラムを立て直しして、2年生から3年生に至るまでの一連の就労支援を職業教育中心に変更したのです。結果としてこの判断が就労率を上げ、さらに職業教育からキャリア教育へ転換できることが判明し、現在の福岡モデルの基礎ができあがったのです。
2020/07/17
執筆署名:佐藤康弘
●次回は、職業教育からキャリア教育への転換を投稿します。